CSオプスの課題と未来:なぜ日本では浸透しないのか?AI時代に不可欠な役割とは?
#寄稿記事
2025年5月20日
本記事は、X(旧 Twitter)のスペースにて、元 HubSpot Japan で日本初のカスタマーサクセス マネージャーを務められたTSUMAMI CONSULTING株式会社の川村氏と、弊社代表の岡村が行った対談内容を基に、生成AIによって構成・編集したものです。記載された見解や示唆は、登壇者個人および各社の公式見解を必ずしも反映するものではなく、将来の結果や動向を保証するものでもありません。また、現在の役割や肩書きを否定・制限する意図もございません。変化の激しいビジネス環境においては、役割や組織体制が常に進化し続ける可能性があることをご理解いただいたうえで、本記事を参考情報としてご活用ください。
音声概要(録音を元に生成AIで作成)
当日の対談音声を元に、生成AIで作成した音声概要になります。
全録音データ
スペースでの全録音データはこちらより再生いただけます。
CSOpsとは何か? その役割と重要性
CSOpsは、カスタマーサクセス組織において、そのオペレーション全体を最適化し、効率化を推進する役割を担います。セールスOpsやマーケティングOpsと同様に特定の部門に特化することもあれば、HubSpotの例のように、マーケティング、セールス、CSを横断するレベニューオペレーションチーム(RevOps)の一部として機能することもあります。
CSOpsの主なミッションは、CSM(カスタマーサクセスマネージャー)が個々の顧客への付加価値提供という、人間にしかできない高度な業務に集中できるよう、業務の汎用化、一般化、そして自動化を推進することにあります。彼らはCSのプロセスに関与し、経営層が必要とするデータ、つまり経営が見たい数字を正確かつタイムリーに出せるように、データ基盤や関連プロセスを整備します。組織がデータに基づき、より少ない人数で多くの顧客に対応できるよう、スケールに耐えうるプロセスや体制を構築することが、CSOpsの中心的な役割と言えます。
具体的な業務内容は多岐にわたります。CSMのためのプレイブックを作成したり、EBR(Executive Business Review)のような顧客との重要な会議の型を標準化したりします。また、CS活動に必要な資料の整備を手伝ったり、ツールを活用して顧客とのコミュニケーションやオンボーディングプロセスなどを自動化することで、顧客体験全体の最適化を目指します。ツール選定から導入、そして社員への定着支援まで、幅広い範囲をカバーすることも多い役割です。
日本のCSOpsの現状と根深い課題
川村さんの投稿では、CSMが5名以上になったらCSOpsを1名配置することを検討すべきという提言がありましたが、日本の多くの企業ではCSOpsという専門職としての採用事例がまだ少なく、「ツール管理者」のような名目で雇われているケースが多いのが現状です。これは、CSOpsという概念自体が日本にまだ深く浸透していないことの表れと言えるでしょう。
日本でCSOpsの普及が進まない背景には、いくつかの複合的な課題が存在します。
役割(ジョブディスクリプション)の不明確さ: 「CSOpsとは具体的に何をしてもらう人なのか」というジョブディスクリプションが不明確であり、採用のタイミングや、採用後の評価方法も確立されていません。
キャリアパスの未整備: CSOpsとしての明確なキャリアパスが描かれておらず、「どういう経緯でCSOpsになり、その後のキャリアはどうなるのか」がブラックボックス化しています。多くの場合、計画的にCSOpsチームが組成されるのではなく、CSOps的な素養がある人がたまたま現場にいて、その人が業務をこなす中で「どうやらCSOpsという役割があるらしい」と認識され、その人がCSOpsを名乗る、という偶発的な形で生まれているようです。
求められるスキルと待遇のミスマッチ: CSOpsには、CS現場への深い理解というビジネスサイドの知識と、API連携やSQLといった技術的な知識の両方が求められます。しかし、後者の技術スキルを持つ人材は、データエンジニアとしてより高い給与を得られる可能性が高いため、CSOpsとしてのキャリアを選択する人が少ないという問題が指摘されました。本来、CSOpsに必要な技術レベルはデータエンジニアほどではない(API、SQL程度)という意見もありましたが、多くの日本企業ではデータ基盤が十分に整っていないため、CSOpsにデータ基盤構築の知識まで求められてしまい、結果的にデータエンジニアへの道を選ぶ人が増える構造があるようです。
ビジネスサイドの技術理解不足: 日本のビジネスサイドの人間は、海外(特にHubSpotのようなテクノロジー企業)と比較して、コードを読む、APIの仕組みを理解するといった技術的な知識への関心が低い傾向があるようです。海外では顧客もある程度技術的な会話ができるのに対し、日本国内では、技術的な課題をシステム化ではなく会話や交渉でなんとか乗り越えようとする傾向が見られる。これにより、そもそもシステム化やツール導入といったCSOps的な取り組みの必要性が生まれにくい側面があるのかもしれません。
予算の確保と経営者のマインドセット: ツール導入やデジタル化といったCSOps的な取り組みを進めるために必要な予算が通りにくいという課題は大きいようです。多くの経営者が「現状うまくいっている」「解約も少ない」と考えがちで、トラブルが起こってからでないと投資に踏み切らない「火消し」的なマインドが見られます。これは、現場の人間が真面目に頑張って問題を乗り越えてしまっている(真面目な人ほど頑張ってしまう)ことも一因かもしれません。オフィス環境整備には予算がついても、働く環境であるツールやシステム、そしてそれを整備するCSOpsへの投資が後回しにされがちです。ツール検討などを現場の責任者や部長が片手間でやることが多く、専任のCSOpsが比較検討や導入・定着に時間をかけて取り組む体制が少ないことも、非効率を温存させている要因です。また、データが整理されていないことによる「見えていないコスト」(例:営業ミーティングで一人ひとりの状況を確認する時間など)を経営層に伝える難しさも指摘されました。
これらの課題が複合的に絡み合い、日本ではCSOpsの重要性が認識されつつも、採用や育成が進まず、結果として現場の非効率が解消されないままになっていると考えられます。優秀な個人に頼る偶発的な状況が続いていると言えます。
CSOpsが切り拓く未来と変化の兆し
しかし、状況は変わりつつあり、CSOpsにはこの現状を打破し、CS組織を次のレベルへ引き上げる可能性が秘められています。
AI時代の到来: AIを本格的に活用するには、データが整理され、統合されていることが不可欠です。バラバラのデータではAIも十分に機能せず、かえってブラックボックス化を進める可能性すらあります。データの整理と活用はまさにCSOpsの主要な役割であり、AI活用が進むにつれてCSOpsの重要性は増していくでしょう。AI活用は、CSOpsの必要性を後押しする大きな波となる可能性があります。
テクノロジーの進化: MCP(Multiple Cloud Platform)のような技術が登場し、複数のデータソースを比較的簡単に接続できるようになれば、CSOpsに必要な技術的ハードルが下がる可能性があります。ただし、接続した後のデータのクリーニングや構造化は依然として必要であり、その部分は引き続きCSOpsの重要な役割となります。
経営層の意識変化への期待: エンジニア上がりの経営者がいる企業では、データの重要性を理解しており、データ基盤が整っている傾向があります。また、データ化やデジタル化への投資は、働く環境を良くするための重要な投資であるという視点が広がることも期待されます。オフィス環境への投資と同様に、ツールやシステムへの投資を重視するマインドセットが必要です。
現場からの声と変化の必要性: 現場のCSMは非効率な状況に疲弊しており、ツールや仕組みの改善を求めています。時には、より良い環境を求めるために、現状への課題を明確に伝え、言葉を選ばずに言えば「ストライキ」に近い形で声を上げることも必要かもしれません。この現場からの声が、経営層の意識を変えるきっかけとなる可能性もあります。
CSOpsは、単なる効率化担当ではなく、データに基づいて経営判断を支援し、組織がスケールしていくための基盤を構築する、より戦略的な役割を担う存在です。現在の日本でCSOpsが担っている汎用化・自動化といった目の前の業務改善も重要ですが、本来の経営視点からのデータ活用やプロセス改善、そしてツール選定・導入・定着といった幅広い役割を担うことが、結果的に働く環境を改善し、組織全体の成果に繋がります。CS責任者などが片手間でやるのではなく、専任のCSOpsが時間をかけて比較検討し、業務フローに合った最適なツールを選定・導入・定着させることが重要です。
CSOps普及への道のり
CSOpsを日本に普及させるためには、優秀な個人に頼る偶発的な状況から脱却し、CSOpsという役割を組織としてしっかりと定義し、育成・評価する仕組み作りが必要です。Cレベル(経営層)と直接話しながらデータ活用やプロセス改善を進められる、ビジネスとテクノロジーを理解した人材が、計画的に採用・育成されることが日本のCS業界全体の発展にとって鍵となるでしょう。
現状、CSOpsの採用や機能が「運」に左右される側面があるとしても、1人のCSOpsが組織にもたらすインパクトは大きく、費用対効果の高い投資となり得ます。正社員としての採用が難しい場合は、外注や副業を含めて検討するのも一つの方法かもしれません。ただし、副業の場合、現場のプロセス理解に深く入り込む難しさも指摘されています。
AIの波がCSOpsの必要性を後押しする可能性は高く、今後CSOpsに注目が集まることが期待されます。CSOpsの役割を明確に定義し、その重要性を広く認知させるための取り組み(例えば、CSOpsに特化したイベントやウェビナー)なども、今後の普及に繋がるかもしれません。これにより、「CSOpsとは何か」という共通認識を醸成し、採用や育成のハードルを下げる効果が期待できます。
日本のCSOpsはまだ黎明期にありますが、AI時代を生き抜き、データドリブンな組織へと変革していくCS組織にとって、その存在は間違いなく「鍵」となります。今後の普及と発展に期待しつつ、今回の話を締めくくりたいと思います。
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