『データドリブンCS』カスタマーサクセス徹底調査レポート#1

#寄稿記事

2025年5月30日

本記事はMagicSuccessとCSヒーローズの共同企画「カスタマーサクセス徹底調査レポート」#1です。

はじめに

こんにちは。私は、カスタマーサポート・カスタマーサクセス歴17年を超えるCSスペシャリストとして活動している135o-ヒャクサンジュウゴド- CEOのきんぐ(牛見暁)と申します。弊社では多様性と共創の観点からビジネスネーム制を採用しています。2025年3月に起業し、カスタマーサクセス特化型の戦略/運用支援のCS専門家チーム「CSヒーローズ」を展開し、スタートアップを中心に企業のCS戦略・戦術の実行加速のお手伝いをしています。
この度、ご縁があって本企画のカスタマーサクセスの調査レポートを寄稿させていただくこととなりました。UPDATA社の皆さま、代表の岡村(おかむー)さん、ありがとうございます!
本調査レポートでは、カスタマーサクセス(CS)における重要な概念の一つである「データマネジメント=データドリブン」に焦点を当て、その価値や定義、データの整備方法、ツール選定や体制づくり、成功事例、予算確保の実現に向けたアプローチについて詳細に解説しています。なお、本レポートの作成はコンテンツの質と信頼性を最優先にするためAI技術を一部活用していますが、筆者自身の経験や知見と照らし合わせながら校正・執筆しています。

1. カスタマーサクセスにおけるデータマネジメントの価値と定義

データドリブンなCSとは、顧客に関する各種データ(利用ログ、契約情報、サポート履歴、NPSなど)を収集・統合・分析し、それに基づいて施策を最適化するアプローチです。カスタマーサクセスはこれまでのカスタマーサポートのイメージにあったような単なる「火消し」ではなく、売上維持・拡大のドライバーとして経営層に認知されています。
Gainsightの調査では、CS施策への投資について98%の企業が「昨年比で同額以上を投じる」と回答し、CS部門の効率化やROIへの期待が高まっています。従来主流だった顧客維持率だけでなく、ネット収益維持率(NDR)や拡張売上といった指標も導入例が増えつつあり、64%の企業が維持率、63%がNDRを主要KPIに活用しています。
つまり、データマネジメントによって正確なKPI管理と予実管理が可能となり、顧客の離反抑止やアップセル・クロスセルの機会創出につながります。また、顧客データを収集し価値化することはCSの第一歩であり、適切なデータ活用が顧客への価値提供の鍵となります。

加えて、顧客体験向上は顧客ロイヤルティやLTV(顧客生涯価値)の向上に直結するため、経営視点ではCSデータマネジメントが長期的な収益安定化に寄与する投資と位置付けられています。実際、データに基づいたCS施策を継続的に改善する組織では顧客満足度が高まり、企業成長につながることが指摘されています。
経営戦略としてCSに必要なデータ基盤を構築し、意思決定や予測に活用することが、SaaS企業の競争力強化に不可欠とされています。

2. CS組織が持つべきデータの種類・整備方法

CSが扱うべき代表的なデータは、顧客の 契約情報(契約プラン・更新日・料金体系など)、顧客マスター情報(企業属性・担当者・連絡先など)、利用状況データ(ログイン頻度・利用機能・利用時間などのプロダクト利用ログ)、顧客接点ログ(メールやチャットのやり取り、サポート問い合わせ履歴、セミナー参加履歴など)、アンケート・フィードバック(NPS、CSAT、アンケート回答など)、課金・請求情報、さらには解約理由や更新意思などが挙げられます。
これらを整理すると、主に以下のようになります。

  • 契約・料金情報:契約開始日、満了日、プラン内容、契約金額、更新・解約履歴など

  • 顧客基本情報:会社規模、業界、導入目的、取引先企業や経営層、担当者リスト・役割など

  • 利用状況ログ:製品の利用頻度、機能ごとの利用状況、ログイン履歴、アクティビティなど(プロダクトアナリティクス)

  • 顧客接点ログ:担当CSとのコミュニケーション履歴(メール・チャット・電話)、セミナー・イベント参加状況、アンケート回答など

  • アンケート・フィードバック:NPS、CSAT、VoCなど顧客満足度関連データ

  • 解約・継続情報:更新・解約の可否、解約理由、更新意向アンケート結果など

これらのデータを統合・整備するには、CRMや顧客データプラットフォーム(CDP)、BIツールなどを活用して一元管理するのが有効です。顧客管理機能を持つCSツールやCRMと連携することで、顧客対応の質が向上し、顧客は必要な情報を適切なタイミングで利用できるようになります。
また、顧客からのフィードバックを収集し、それらを基に継続的な改善を進めることが、企業の持続的成長につながることも指摘されています。以上のデータを社内で共有できる形(システム化・ダッシュボード化)で管理し、定期的に更新・品質チェックを行っていくことが、データドリブンCSの礎となります。

3. データドリブンなCSの実践:ツール選定、体制づくり、活用方法

デジタル時代のCSでは、適切なツール選定組織体制の整備が重要です。
市場にはGainsightやMagicSuccess、Growwwing、Successhub、Totango、のカスタマーサクセスプラットフォーム(CSP)、テックタッチやPLAINERなどのプロダクトツアー/コンテンツ作成ツール、SalesforceやZendeskなどのCRM、Amplitude・Mixpanel・Pendoなどのプロダクトアナリティクス、TableauやLookerなどのBIツールが存在します。
これらはワークフロー自動化やダッシュボード機能を備え、顧客の課題を先回りして把握・解決するプロアクティブな対応を支援するとされています。
例えば、CSツールを活用すれば、顧客接点の状況や利用状況データから有用な兆候を得られ、チャーンの兆候を早期に察知できます。
さらに、メール開封やイベント参加などのデータに基づき、どの顧客に次のアプローチをすべきかを自動選定できるため、顧客に対しては常に能動的・プロアクティブなフォローを行っている印象を与えることができます。

また、CS組織の体制づくりとしては、顧客接点を多くしたハイタッチCSに加え、CS Opsやデータアナリスト部門を設けるケースが増えています。
実例では、Uzabase社(Speeda)ではCS部門から「CS Opsチーム」を切り出し、1:N対応やデータ分析専任の組織としました。このように体制を分離することで、CS担当者は顧客伴走に専念しつつ、CS Opsがデータ収集・分析・施策提案を高速で回せるようになります。同社では顧客のアカウント情報や利用状況、セミナー参加履歴など散在するデータを集約し、スコアリング体系を構築しました。
これにより、各顧客の状況を可視化して最適なソリューションを提案できるようになっています。さらに、解約分析や顧客モニタリングの仕組みを整備し、契約更新前だけでなく年間を通じて顧客の状態変化を追える体制を目指しています。

実践においては、顧客状況を可視化したダッシュボードや顧客ヘルススコアの活用が効果的です。
顧客ごとのスコアリングモデルを設定し、利用状況・経営指標・エンゲージメント指標などを統合して可視化することで、リスク顧客や好調顧客を迅速に把握できます。
また、アラートやKPI目標を設定し、解約懸念度の高い顧客には自動的にフォローアクションを起こす仕組みも有効です。こうした分析・可視化基盤の構築・運用には、ETLツールやデータウェアハウスも活用され、全社横断的にデータドリブンCSを推進することが望ましいとされています。

4. 成功事例

国内外の先進企業では、データドリブンCSによって顕著な成果を上げている事例があります。
例えば、国内大手Sansan社は2018年からGainsightを導入し、データを活用したCS体制を徹底しました。その結果、追加受注が年間15%向上し、解約率は導入前の0.8~0.9%から約0.63%に低下しています。
また、オンボーディング業務の約20%を自動化しているため、CS担当者の工数を大幅に削減できています。
これらの成果は、顧客データの一元管理と分析を通じてCSプロセスを最適化した結果といえるでしょう。

国内スタートアップでも事例が出ています。
freee社ではデータアナリストがCSチームと協力し、「理想ドリブン」アプローチでCSステージ(導入→定着→拡大)を設計しています。同社は本質的なユーザー価値と理想的なプロダクト利用を指標化し、各ステージでの達成度合いを計測・モニタリングすることで、解約要因の発見や拡大機会の特定に成功しました。

海外では、米国のデータセンター事業者Flexentialが顧客健康スコアを構築し、ネットリテンションを向上させた例があります。Flexentialでは定量・定性指標を組み合わせてスコアを設計し、CS担当者の判断基準を明確化しています。これによって解約リスクが高い顧客を事前に特定し、適切な対応を実行することで収益基盤を強化しています。

さらに、データプラットフォームを活用した事例として、急成長スタートアップによる取り組みも注目されます。例えば、あるSaaS企業ではETLツールを導入しプロダクトおよび顧客データを時系列で蓄積した結果、顧客分析と資金調達向けレポート作成に大きく貢献しました。少人数でも運用可能なデータ基盤を短期間で構築し、経営判断の迅速化とCS施策の高度化を実現しているようです。

これらの事例からわかるように、データドリブンCSの導入効果は数値としても明らかといえます。アップセル・解約防止・業務効率化といった複数の成果が同時に得られるため、CS施策が会社全体の業績向上に寄与することが実証されているため、取り組む価値は高いともいえるでしょう。

5. 予算確保・経営層巻き込みの提案方法とROI

経営層の支持を得てCS投資を確保するには、定量的な根拠による提案が不可欠です。
まずは「顧客維持率(チャ―ンレート)」「ネット収益維持率(NDR)」「売上継続率(NRR)」など、経営に直結するKPIで効果を示します。前述の調査でも、顧客維持率やNDRを主要指標とする企業が多いです。
また、CS投資について98%の企業が予算を維持・増額すると回答しており、今やCSが事業成長の重要要素であることを示しています。著者の主観としては2025年5月時点では、CS予算が絞られてきている様子もうかがえますのでデータを一概に鵜呑みにせず、自社の組織状況としっかり向き合った上で検討・提案されることを推奨します。

予算確保の提案資料では、以下のような観点でROIを算出・提示するとよいでしょう。

  • 解約抑止による売上維持:解約率を1%改善すると年間売上に与える影響額、LTVの向上見込み

  • アップセル/クロスセル増加効果:CS施策による追加受注率の変化と売上増加額

  • 業務効率化によるコスト削減:自動化・データ活用による人的工数削減効果(例:Sansan社ではオンボーディング20%を自動化し、CS工数を大幅に削減)

  • 他社事例の成功インパクト:Sansan社の「アップセル15%増・解約率低下」のような実績や、Flexential社の事例を紹介して説得力を高める

上記のシミュレーション結果を経営層に提示し、「●●施策で○○万円の増収見込み」など具体的に示すことで、投資対効果を明確化します。最後に、成功事例と自社課題を踏まえてロードマップを示し、施策を段階的に進める提案を行います。これにより、CS施策が経営戦略に不可欠であることを経営層に納得してもらい、必要なリソース(人員・ツール予算)を獲得します。

あとがき

本レポートは、最新の事例や文献情報をAIによる高度なリサーチで網羅し、その品質と信頼性を担保した上で執筆しています。データドリブンCSの導入は企業競争力を大幅に向上させる投資ですので、ぜひ本レポートを参考に貴社の取り組みを加速させてください。
さらに詳しい支援が必要な場合は、顧客データを資産に変える顧客管理DXプラットフォーム「MagicSuccess」( https://magicsuccess.tech/ CS歴17年以上の代表が展開するCS特化型戦略支援の専門家チーム「CSヒーローズ」( https://135o.jp/6 )へのお問い合わせもお待ちしております。
CS-BPOも取り入れる企業が増えていますが、データ×テクノロジーでCSを革新する取り組みや、戦略を定義しなおすことへの1つの選択肢として検討してみてください。

企画:株式会社UPDATA × 合同会社135o
活用生成AI:chatGPT(DeepResearch),notebookLM
校正・執筆:合同会社135o CEO きんぐ(牛見暁)
https://x.com/akatsuki_cs

参考文献一覧

  1. Sansanが「Gainsight」を導入してCSを強化した理由とは
    https://boxil.jp/mag/a7537/

  2. CSにOps組織を設けたSaaS企業の事例まとめ(SaaS CSのスケール)
    https://note.com/kenichi_koga/n/n13bfc916d2b4

  3. freeeに学ぶ、データを活用したカスタマーサクセス体制の構築方法とは
    https://note.com/kazuki_andoh/n/n1832281cb2c4

  4. カスタマーサクセスに必要なKPIの設定方法・指標の種類を徹底解説
    https://ferret-plus.com/23432

  5. 【レポート】Gainsight社が語る「CSの未来」:CSは今や“売上に責任を持つ”部門へ
    https://www.cxcommunity-japan.org/entry/gainsight-report-2022

  6. 国内外CSツール11選|導入のメリット・比較ポイントも解説
    https://www.mazrica.com/blog/cs-tools/

  7. Flexential社が成功させた、ヘルススコア構築とNDR改善の取り組み
    https://community.gainsight.com

  8. Gainsight社「The Customer Success Index 2022」調査レポート
    https://www.gainsight.com/customer-success-index-2022/

  9. カスタマーサクセスツールの選び方とおすすめツール比較【2024年版】
    https://boxil.jp/mag/a8384/

  10. SaaSスタートアップがデータ基盤をつくった話(ETL・BI導入)
    https://note.com/datacats/n/n92b3e0910b80