『スケーラブルCSへの挑戦』カスタマーサクセス徹底調査レポート#3

#寄稿記事

2025年8月20日

本記事は、MagicSuccessとCSヒーローズの共同企画「カスタマーサクセス徹底調査レポート」#3です。

はじめに

こんにちは。CS歴17年超のCSスペシャリストとして活動している135o-ヒャクサンジュウゴド- CEOのきんぐ(牛見 暁)です。2025年3月に起業し、地域創生に向けた複数事業のうち、カスタマーサクセス支援特化のチーム「CSヒーローズ」を組成。スタートアップのCS戦略策定・実行を伴走支援しています。

本レポートでは、CS業務における人手不足・対応負荷の課題を乗り越えるキーワード「スケーラブルCS(Scalable Customer Success)」を特集します。調査はChatGPT DeepResearch等のAIを活用して行い、企業公式情報・最新レポート・実践事例をもとに整理し、人間の視点で実務的に編集・執筆しています。


1. なぜいま『スケーラブルCS』が必要か?

カスタマーサクセスは、単なるサポートや火消しではなく、顧客との関係を強化し、解約抑止やアップセルを促進する経営上の重要機能であることはSaaS業界では広く認知されてきていますが日本全体でみるとまだまだ認知が薄いテーマです。個別最適では事業は決してスケールしません。全体最適を推進するという意味でもカスタマーサクセスは企業経営において非常に重要な概念であることを学び、深めるとともに、各々のアクションにつなげていきましょう。
さらに、事業を最大化するための取り組みとして、AIの活用から生産性も爆発的に改善されていく未来がくる日も近いと思います。AIに仕事を奪わせず、AIと共に仕事をするスキルをつけていくことも非常に重要です。

ベイン・アンド・カンパニーの調査によれば、新規顧客獲得にかかるコストは既存顧客維持の5倍以上と言われており、今や「いかに効率的に既存顧客へ価値を届けるか」が企業の競争力を左右しています。

しかし、急増する顧客数と限られたCSリソースの中で、全顧客にハイタッチで伴走することは困難です。ZendeskのAI機能「Intelligent Triage」は、問い合わせのインテント・感情・言語を自動判定して優先度付けや振り分けを支援します。これは主にサポート発の基盤ですが、工数圧縮や優先度制御という観点でCSのスケールにも波及しうる位置づけです。


2. スケーラブルCSを支える3つの鍵

スケーラブルCSを達成するにはステップがあります。現時点では①に取り組んでおられる企業が多く、②に踏み出せている企業は少ない印象です。

① 自動化・デジタルタッチ(Tech Touch)

テックタッチは、チャットボットやアプリ内通知、自動メール配信などを駆使して顧客と非対面で接点を持つアプローチです。Gainsightや主要なCSプラットフォーム各社は「日常的な問い合わせや定型タスクは自動化し、CSMは高付加価値業務へ集中すべき」と一貫して提唱しています。

マネーフォワードでは、オンボーディング標準化や業務効率化により、CSMの作業を効率化し、活動精度を上げる取り組みを実施しています。

② 生成AI・AIエージェントの活用

最新動向として注目されているのが、生成AI(ChatGPT等)を活用したCS自動化です。

CSチームが抱える課題の1つが「FAQの作成・問い合わせ対応・レポート作成」などの定型業務です。これらを生成AIで代替し、CSMが戦略的活動に集中する時間を確保する企業が増加しています。

周辺ヒアリングベースでは、GPT-4系のAIチャットボット導入で解約率やLTV改善を狙う取り組みが増えています(※公開事例として数値まで検証できるものは限定的)。一方で、生成AIを活用したAIエージェントのPoC〜実装は確実に広がっています。

③ データドリブンなヘルススコア運用

データ活用もスケーラブルCSの柱です。ZendeskやGainsightでは、プロダクト利用状況やチケット履歴、NPSなどから顧客の健康状態(ヘルススコア)をAIで可視化。

これにより、「誰に・何を・いつ」提供すべきかが明確となり、リスク顧客への先回りアプローチやアップセル対象の優先順位付けが実現できます。

サポート由来のデータ(チケット量・初回応答遅延など)もCSヘルス指標の早期シグナルとして再評価されており、サポート→CSの双方向連携がスケーラブル運用のカギになります。


3. 実践企業の取り組み事例

前項の①デジタルタッチを実践する上でも、まずは業務の棚卸や、効率化から始めましょう。
以下は、業務の効率化の事例を取り上げています。

マネーフォワード

  • プロダクト内ガイダンスでオンボーディングを標準化

  • 再現ポイント: ツールでアプリ内ナビをノーコード設置導入初期の詰まり解消CSMの属人タスク削減

Autify / SmartBank

  • Autify:CSMとCRE(Customer Reliability Engineering)を新設した背景・意図を自社オウンドメディアで解説。トイル削減や品質/信頼性向上の狙いを明示。

  • SmartBank:CRE立ち上げの振り返り(CREの定義・役割・運用知見)。CS/サポートとCREの連携が語られ、トイル削減等の方向性を裏付け。

Zendesk

  • Intelligent Triage(Advanced AI):AIがインテント/感情/言語を自動判定して振り分け・優先度付け・自動処理に活用できる公式ドキュメントあり

OPTiM Customer Success Portal

  • 公式プロダクトページ:生成AIを活用したFAQ自動生成・AIチャットボット等の機能、問い合わせ削減50%以上満足度向上の訴求あり。自動化と問合せ削減の根拠に。

  • 公式リリース:生成AI連携FAQ自動生成・ナレッジ検索などCS向け自動化の強化を告知。

ダイニー

  • 議事録や社内資料の自動生成:毎週10時間以上の工数削減

  • 一部のカスタマーサポートの AI 応答自動化:AIチャットボットで約60%の問い合わせが自動応答に

  • 営業資料の自動構築:資料作成の時間が 1/4 に

  • 仕様書・デザイン・コーディングの効率化:PdM・デザイナー・エンジニアの作業時間が月15時間以上削減

  • Mock 作成やリサーチ業務の省力化:3人×1週間 → 1人×1日 に短縮(約93%削減)


4. スケーラブルCS導入の進め方

  • 属人化業務の洗い出しと標準化

  • 自動化しやすいタスクからQuick Winを狙う

  • CSMと協働しツール設計・KPI設計を推進

  • ROIを明示したうえで経営層を巻き込む

前回までの調査を振り返ると、カスタマーサクセスにドライブをかけようとするときやスケーラブルにしていく際にはまず、カスタマーサポート領域の効率化が相性がいいことは事例をみても明らかです。「再現性」にフォーカスをあてた時、問い合わせやFAQなど受動アクションや顧客の自己解決を促進する部分と親和性が高いです。人間が深く折衝するハイタッチ領域であるCSMについては各種活動のレポートやアクション管理など、まだまだ事務的な要素が大きいと言えるでしょう。とは言え、「属人化業務の洗い出しと標準化」を行うことでCSM業務・ハイタッチ業務の効率化は目指せます!
効率化の先にAIの活用をアドオンしながら、データドリヴンに取り組み、スケーラブルCSを目指しましょう!


あとがき

スケーラブルCSは、単なる効率化ではなく「戦略実行を支える基盤」です。人の力とテクノロジーの融合によって、より多くの顧客へ、より良い価値提供が可能になります。

もし、CSの自動化や戦略実行の伴走パートナーをお探しであれば、「MagicSuccess」(https://magicsuccess.tech/)や、実績豊富なCSスペシャリストチーム「CSヒーローズ」(https://135o.jp/6)をご検討・ご相談ください。

参考文献一覧