【Success Switch vol.01】「CSは営業である」スタメン VP of CS 山田氏が語る、正解のない“組織変革の領域”で試行錯誤を重ねたCSリーダーの本音(前編)
#インタビュー記事
2026年7月6日

日本のカスタマーサクセス(CS)業界において、「自社に合った組織の型」を確立できずに悩む企業は少なくありません。ライフサイクル設計、オンボーディングの仕組み化、エクスパンションの指標策定など、一筋縄ではいかない課題が山積しているのが現場のリアルです。
こうしたCS組織のリアルな課題に正面から向き合い、次世代リーダーたちが一歩を踏み出すための「重要な意思決定の裏側」に迫る対談型VideoPodcast『Success Switch』がスタートしました。豊富な現場知見を持つ株式会社UPDATAの関戸翔太がモデレーターを務め、業界のリアルな課題を解き明かしていきます 。
記念すべき第1回のゲストにお迎えしたのは、組織のエンゲージメント向上プラットフォーム『TUNAG(ツナグ)』を提供する、株式会社スタメンの執行役員・VP of CS 山田さんです。
前半となる今回は、山田氏の自己紹介やスタメンの組織体制をはじめ、大企業から当時10名規模だったドベンチャーへ飛び込んだ背景、そしてリーダーとして組織を率いる中で迎えたキャリアの決断について深く迫っていきます。
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立ち上げから伴走して8年。キャリアの節目となった「決断」
関戸:
山田さん、本日はよろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介からお願いできますでしょうか。
山田さん:
よろしくお願いします。私は株式会社スタメンで、執行役員・VP of CSとしてカスタマーサクセス部門の担当役員を務めております。私自身は2018年に入社し、現在で約8年ほど在籍しています。入社当時はまだCSという部門自体が存在していなかったのですが、立ち上げから今日までずっと従事してきました。そのため、私のCSとしてのキャリアはスタメンの社歴とほぼ同じ期間になりますね。
関戸:
8年! CS立ち上げから組織の成長をずっと支えてこられたわけですね。それ以前もCSの領域にいらっしゃったのですか?
山田さん:
いえ、実は前職は1万人規模の大企業で、サービス系の会社で営業やマネジメントをやっていました。それなりに結果も残していましたし、そのまま残っていても活躍はできたのかもしれません。ただ、どうしても「自分の手触り感」を持ってビジネスを動かしたいという想いが強くなり、当時まだ10名ちょっとしかいなかったスタメンに2社目としてジョインしました。
関戸:
1万人から10人。その環境のギャップに驚きはありませんでしたか?
山田さん:
今だから言えますけど、「とんでもないところに来ちゃったな、あれもこれも無いぞ!」って思いましたよ((笑))。でも、スタートアップの大変さを何も知らなかったからこそ、勢いで飛び込めた。まさに「若さがゆえの決断」だったなと振り返ります 。
従業員体験を最大化する『TUNAG』と、4つの組織セグメント
関戸:
続いて、スタメンさんが展開されているサービスについてもぜひご紹介ください 。
山田さん:
株式会社スタメンは2016年に設立された会社で、2020年に東証グロース市場へ上場いたしました。メイン事業である『TUNAG(ツナグ)』は、一言で言えば「組織のエンゲージメントを向上させるためのプラットフォーム」です。近年注目されている「従業員体験(EX)」を最大化するためのサービスとも言えます。
具体的には、どこの企業様も抱えている組織課題に対して、社内施策の企画・設計から実行、そしてPDCAを回すところまでを全般的に支援させていただいています。
関戸:
組織改善というゴールのない領域にハイタッチで伴走されているのですね。現在のCSチームの組織構成や規模感はどのような体制になっているのでしょうか 。
山田さん:
現在は全体で30名弱の規模感です 。役割としてはCS의 企画・推進を担う「CSオプス」と、前線で伴走する「CSM」がいます。
CSMチームは企業の「規模感」でセグメントを切っており、①エンタープライズ(大手企業)、②ミッドサイズ、③SMB(中小企業)の3つに加え、実は僕らの大きな特徴として④ユニオン(労働組合)という専門チームを設けています。労働組合様の組織改善には独自の専門性が求められるため、インダストリーカットでチームを分けている形ですね。
各チームに責任者を置いていますが、売上インパクトの大きいエンタープライズに関しては、現在も私が兼務して直接メンバーと一緒に動きながら統括しています。
「組織変革の領域」だからこそのCSの難しさ
関戸:
大手企業から労働組合まで、非常に明確なセグメント分けをされているのですね。ただ、組織改善という領域は、CSとしての介在価値がものすごく問われるのではないでしょうか 。
山田さん:
そうなんです。僕らのプロダクトって、労務管理システムのように「絶対に導入しなければ会社が回らない」という、いわゆるマスト・ハブ(Must-have)な商材ではないんです。どちらかと言えば「あったらいいな」から始まるNice to haveの領域。
だからこそ、お客様から「これって、結局なんのためにやってるんだっけ?」と目的を見失われやすい難しさがあります。CSとしては「負(マイナス)を解消する」のではなく、「ゼロをプラスにする(付加価値を生む)」ことが求められます。
こちらから提案を差し上げても、「うちの社風には少し合わないかもしれない」「そこまで踏み込むのは難しい」といったフィードバックをいただくことも少なくありません。こうしたお客様に寄り添いながら最適な形を模索する試行錯誤の連続こそが、この領域のCSならではの日常ですね(笑)。
1人分から15人分へ。リーダーとして重圧と向き合いつつ、挑戦を続けた日々
山田氏が現在のポジションに至るまでの、最大の「キャリアのスイッチ」は今から3〜4年前に訪れた 。それまで個人として数十社を担当し、圧倒的な成果を出していた山田氏に、チーム全体の統括を引き継ぐタイミングがやってきたのである 。
山田さん:
それまでは自分が頑張れば、担当しているお客様はサクセスできていました。原因が自分にあるのでコントロールしやすかったんです。でも、急に15人ほどのメンバー全員のお客様、つまり「1人分から15人分の成果」を背負うことになりました 。
単純計算で15倍の重圧です。メンバーが対応に苦慮している案件があれば、自分が責任者として前線に出て行かなければならない。それこそ、常に強い緊張感のなかに立たされて、地道にお客様と向き合いながら一歩一歩進んでいく……そんな感覚の数年間でした 。
関戸:
プレッシャーで逃げ出したくなる瞬間はなかったのですか?
山田さん:
逃げたり辞めたりを考える暇すらなかった、というのが本音です((笑))。
ただ、CSって世間からは「営業をしたくない人が行く、優しいサポート職」と思われがちじゃないですか。でも、全然そんなことない。毎日お客様と本気でぶつかり合う、泥臭くてタフな世界なんです。
でも、その最前線でお客様のために試行錯誤を繰り返したあの経験こそが、今の自分を支える強力な「ボディーブロー」のような血肉になっていると確信しています 。
山田氏が導き出した答え:結論、CSは「営業」である
多くの課題に向き合い、リーダーとして経験を積んできた山田氏 。そのリアルな歩みから導き出した「カスタマーサクセスとは何か?」という問いへの答えは、非常にシンプルで力強いものだった。
山田さん:
超広義に言えば、「CSは、営業である」と思っています。
ビジネスの本質がお客様の課題解決であるならば、それを世の中に波及させて対価をいただく行為はすべて営業です。特に僕らのように正解のない組織改善に向き合うCSは、リアクティブ(受動的)に待っていては何も生まれません。プロアクティブ(能動的)に仕掛け、お客様すら気づいていない課題に気づきを与え、変革をリードしていく。
だから僕は、「僕らのプロダクトを入れれば入れるほど、皆さんの会社は絶対に幸せになりますよ!」と確信を持って提案しに行く強気な営業こそが、CSのあるべき姿だと思っています。
【前半を終えて】
山田氏の「CSは営業である」という言葉には、現場の最前線でお客様に向き合い、サクセスを勝ち取ってきたリーダーだからこその重みがありました。
特に『TUNAG』のようなNice to haveの商材において、CSが提供しているのはツールではなく、企業の「変革」そのものです。だからこそ、CSは単なるサポートに留まらず、お客様の経営の未来にまで踏み込むプロアクティブな「営業」でなければならない。この山田氏の覚悟は、多くのCS担当者にとって、明日からの動きを変える大きな「スイッチ」になるはずです。
次回、後半戦では、そんな山田氏が率いるスタメンCS組織が、いかにして「エンゲージメント向上」というゴールのない旅路にお客様を巻き込み、組織の意思決定を支援しているのか、具体的な「組織のスイッチ」に迫ります 。






