「カスタマーサクセスは天職」と語る、レクシエス・CSカレッジ代表丸田絃心氏インタビュー

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2024年4月1日

カスタマーサクセス領域の有識者であるレクシエス株式会社の代表取締役の丸田さんに、カスタマーサクセスとして高いパフォーマンスを発揮するコツや今後のカスタマーサクセス業界の課題などについて伺いました。

丸田絃心氏プロフィール

レクシエス株式会社 代表取締役社長 / CSカレッジ(カスタマーサクセスカレッジ)代表

慶應義塾大学を卒業後、外資系投資銀行に入社。その後、広告代理店や人材・組織コンサルを経て、AIベンチャーでカスタマーサクセス(CS)の責任者を経験。2022年にレクシエス(株)を創業。これまでに多数のCSの講演や外部顧問、Newspics+dでの連載や大学の非常勤講師などを歴任。日立アカデミー様やビジネスブレークスルー(BBT)様でCS研修講師も務める。CSの普及と支援を使命に約5,000人規模のCSコミュニティ「CSカレッジ」を主宰。日本最大級のCSカンファレンス「BRIDGE」などを開催。延べ数千社・1万人以上への講演・研修・イベント開催を行い、外資・日系の大企業からスタートアップ、設立間もない企業に至るまで、100社以上の支援に携わる。 

Q.丸田さんの経歴を教えてください

新卒で入社した証券会社でアナリストをやっていました。

そこからWEBの広告代理店を起業し、少数精鋭で動画広告に特化したクラウドソーシングサービスを提供する中で、営業やマーケティング活動をやっていました。

そこから人・モノ・金の“人”の部分に寄り添いたいと思い、人事コンサルに転職をして、企業の変革や人の育成にキャリアを寄せました。それがすごく面白くて、やっぱり自分は人の支援、人を育てるっていうところに軸があるなと思ったんです。

ただ、大企業の組織変革は5年・10年とかかってしまう。もう少し短期間で変化を感じられるやり方を求めて、次はAIスタートアップの会社に転職しました。

テクノロジーがあると人や組織はガラッと変わる。でも、テクノロジーだけで変わることは難しいので、テクノロジーを使えるようにするトレーナーがいて、初めて組織が変わる。その「トレーナー」が「カスタマーサクセス」でした。

カスタマーサクセスと出会って、仕事がすごく面白くてカスタマーサクセスにハマっていきました。天職だと思いましたね。

カスタマーサクセスとしてお客様にCSをするというところから、徐々にCSの知見やノウハウ、気づきを他のCSの業界の方にイベントで登壇して発信したりするようになり、「CSをCSする。」みたいな仕事が増えて、そっちの方に身を寄せていきつつ、最終的には2021年に独立しました。独立してからはCSのコンサルや研修、イベントを通してカスタマーサクセスの方々を支援しています。

Q.カスタマーサクセスの魅力は?

お客さんの成功する瞬間、うまくいく瞬間や成長しているプロセスに立ち会えるというところに魅力を感じました。「人との会話やコミュニケーションを通じて、困り事を解決して、結果的にその人に喜んでもらうのが好き」という自分の性格と、カスタマーサクセスの業務内容がドンピシャだったんです。

これまで様々な職種を経験する中でどこかに矛盾があるように感じることがいくらかありました。例えば「お客さんに必要だと思っていなくても、目標のために売らなければいけない」のような場面が時々ありますが、カスタマーサクセスは真にお客さんに向き合っていけばいい。お客さんが成功すれば、結果としてお金を払ってくれる。自分の心の中に矛盾が生じないというのがすごく面白い。ビジネスの本質をとらえているように感じました。

かつ、プロダクトフィードバックというお客さんの声をどんどんプロダクトに反映させて、プロダクトを良くして新しいものを作っていける。お客さんの事業も成長できて、自社の収益もアップして、自社のプロダクトも育てられる。カスタマーサクセスは全方位的に貢献できる。

「今までの経験や自身の強みが活かせる」「顧客の成功に寄り添う楽しさ」「事業成長に貢献できる重要さ」この3つを感じられるカスタマーサクセスはまさに天職だと思いました。

あとはカスタマーサクセスは見方によっては「0→1」の場面も多いので、変化の激しい「0→1」をたくさん体験できる。0から何かを生み出すことが好きな自分にとってはすごく魅力的です。

Q.レクシエス設立の背景は何ですか?

私が2022年に立ち上げたレクシエス株式会社はミッションを「『成功』に手が届く世界をつくる」、ビジョンを「人と組織の可能性を広げる学びのプラットフォームになる」とそれぞれ掲げています。

私は子どものころから新しく何かができるようになることが好きで、0から学び、苦戦して、頑張って、できるようになることを目指す。というのを繰り返してきました。元々、私は小学校~中学校の15年ぐらい、学年で成績が底辺、勉強もスポーツも友達付き合いもできなくて、のび太君から優しさを取ったような子どもでした笑

そこから、できないことを「どうしたらできるようになるんだろう」を繰り返して少しずつできるようになるコツを掴んできた子どもだったんです。

人が何かを始めよう!と思ったとき、うまくいくまでは苦しい時間が多いので、それが「やりたい!」という気持ちの妨げになりますよね。新しいことをやりたいと思った人が、学ぶ機会・学ぶ場がなくて途方に暮れたり、知らないことで機会を失ったり、手段がないから成長できない、ということを減らしたい、というのが、私の考えです。もっとスムーズに学べて、スムーズに成長できて、早い段階で成功に至る目標達成をする、ということを、実現できないのか?というのは、幼少期から感じていたことでした。

そんな思いが昔からあったので、レクシエスでは、カスタマーサクセスを学びたいと思った人が、やるべきことや身につけるべきものをすぐに学べて、基礎から学んでいける場にしたいと考えています。基礎を学ぶ段階でつまずいて苦しむ、という人をなくしていきたい、というのが、私の願いです。

カスタマーサクセスが駄菓子屋さんとかいうレベルまで、世の中に当たり前に広がると、世の中の誰かが何かをやりたいと思ったときに、それを支援してくれる支援者が至る所に存在する世界ができる。だから、世の中全員がカスタマーサクセスをやれば、人はもっと幸せになると信じています。

そのような可能性を持った”カスタマーサクセス”を「教える・広める」という意味で、「レクチャー」と「カスタマーサクセス」の掛け算で「レクシエス」という社名にしました。

Q.レクシエス株式会社で行われている「CSカレッジ」について詳しく教えてください!

CSカレッジは、2019年の11月からスタートした、日本で最大級のカスタマーサクセスのコミュニティで、2024年3月現在で5000人強の方に参加いただいています。「カスタマーサクセスについて学べる」「カスタマーサクセスの人たちが繋がれる」という、学びと繋がりを提供しています。

最近は色々な会社さんに支援していただいたり、コラボしていただいたりして、さまざまな規模感や内容でイベントを行っています。

ありがたいことに、「CSカレッジで学んだことを生かして仕事で成功した!」「CSカレッジで会って転職した!」「CSカレッジで会った人とずっと仲良くライバルとして一緒に切磋琢磨している!」という声を聞くことが増えており、そういった部分に貢献できていることに楽しさや喜びを感じています。

レクシエス株式会社では、「CSカレッジ」以外にもコンサルと研修・人材育成の事業も行ってます。コンサルは、立ち上げたばかりのスタートアップ企業からプライム上場の企業まで幅広く支援しています。

「研修・人材育成」の事業は、企業相手に「CSMとしてハイパフォーマーになる」というカスタマーサクセスの上級者向けの研修や、「カスタマーサクセスとは?」という基礎知識をお伝えすることもあります。

最近では個人向けのコーチングサービスも行っており、カスタマーサクセスをやっている方にコーチングをして、業務の相談に乗ったり、キャリアプランの壁打ちを行ったりしています。

Q. 丸田さんにとってカスタマーサクセスとは何ですか?

カスタマーサクセスは、会社によって本当にいろんな形がありますが、私の中では「ITサービス版のパーソナルトレーニング」だと思っています。

パーソナルジムでは、お客さんから「痩せたい」とか「マッチョになりたい」という目標を聞いて、「何ヶ月で何キロ痩せましょう!」とか「こういうトレーニングをしましょう!」というのを、一緒に計画を立て、その目標に向かって伴走しながら、アドバイスしたり、話を聞いたりして、目標達成に寄り添っていきますよね。

カスタマーサクセスも、お客さんの「こういうことをやりたい!」「こういうことを求めている!」という目標に寄り添い、伴走して、レクチャーしたり問題解決したりしながら、「目標達成」や「成功」にお客さんを導いていく、ということだと思っています。

ハイタッチでゴリゴリやる場合もあれば、テックタッチでノウハウを提供する場合もある。やり方はいろいろあれど、やっている姿として大きく捉えると、「ITサービス版のパーソナルトレーニング」だと思っています。

Q.高いパフォーマンスを発揮しているCSの特徴など教えてください

1つ目は「勝ちパターンが明確であること」。

「うちのプロダクトはこうやって使うと成功する。そのために解決しないといけない課題はこれ」という、高い確率でお客さんが成功に至る「勝ちパターン」や「型」が明確になっている会社はやっぱり強いです。

2つ目は型化がきちんとされていて、しっかり運用されていること。

高い個のスキルと組織化が両立していて体制が整っている企業は強いです。知見などが組織内で共有されており、KPI設定や「お客さんに向き合う」というマインドが根付いているような企業は高いパフォーマンスを発揮しています。

3つ目はカスタマーサクセスを全社的に行えていること。

カスタマーサクセスを、カスタマーサクセス部だけで行っているか、全社としてやっているかでは全然違います。経営側がカスタマーサクセスに理解がないと、カスタマーサクセス部に素晴らしい戦略があって、体制が整っていても上手く動かなくなってしまう。

例えばSaaSの場合、お客さんの主なタッチポイントはカスタマーサクセスよりもプロダクトなので、プロダクトがイマイチだとカスタマーサクセスがいくら頑張っても限界がある。プロダクトフィードバックを通じてお客さんのニーズに応えられるプロダクトにして、カスタマーサクセスとプロダクトの両輪をしっかりと回していき、全社的に顧客の成功に向き合っている組織は強いですね。

Q.カスタマーサクセスに向いている人はどんな人でしょう?

1つ目は顧客志向が強い方。「お客さんのために何かをしよう」というマインドがある方。

「自分のKPIのために」という考えが強くて、お客さんに向き合ってない方は、向いていないと思います。お客さんに信頼されて、中長期で伴走していくには「お客さんのために」というマインドは必要不可欠です。

ただ、今のカスタマーサクセスの方々は顧客志向は強く、ホスピタリティは素晴らしいが、自社の利益に繋がっていないケースもある。顧客志向を持ちつつ、自社の利益も考えるWin-Winの関係を築けることが重要だと思います。

2つ目はお客さんの理解度が高い方。

たとえば、人事労務のサービスを扱っている人が、人事労務の制度をまったく知らなければその業界のお客さんの支援は難しいですよね。お客さんのビジネス・業界・職種について深く知っていなければいけないと思います。理想はお客さん以上に、お客さんのビジネス・業界・職種を知っている状態です。そのために情報収集や勉強ができる方は向いていると思います。

3つ目、4つ目は目標達成力と課題解決力がある方。

カスタマーサクセスはお客さんに喜ばれるだけではなく、アップセルやリテンションなど、自社の目標も達成しなければいけないので、達成のために、課題を分解し、アクションに落としこんで、数字を追い、目標を達成していく必要があります。自分の業務の課題もお客さんの課題も、どちらも明確にして解決していかなければならないのです。営業とコンサルの良いとこ取りのようなところがカスタマーサクセスにはあるので、目標達成力と課題解決力がある人は向いていると思います。

5つ目は対人関係構築力高い方。

これはハイタッチ寄りの観点ではありますが、「目標達成できて、課題も解決できるけど、人付き合いがイマイチ」だと、成果を出すのが難しい場合もありますので、お客さんとしっかり関係性を築ける力がある方は向いていると思います。

ただ、5つ答えましたが、すべて完璧に兼ね備えている方はほとんどいないかもしれません。このうちのどれかが秀でていて、そのほかは最低ラインに達しているならカスタマーサクセスに向いていると思います。

Q.カスタマーサクセスの大変さ、難しさはどんなところにありますか?

1つ目は業務の広さと深さ。

カスタマーサクセスは業務範囲が広いですし、お客さんに深く入り込まないといけないので、「広さ」と「深さ」をカバーしないといけない。お客さんの課題を解決しながら、プロダクトフィードバックをしたり、業務を型化したり、お客さんと良好な関係を構築するための対人能力やコミュニケーション能力を磨いたり、裏ではデータをガリガリ読み解いたり。これはカスタマーサクセスの仕事の面白みでもありますが、一方で難しい部分でもあります。

2つ目は顧客理解。

先ほど、「お客さんよりもお客さんの業務や業界に詳しくなる必要がある」とお話ししましたが、実際のところそれをやり遂げるのはかなりハードルが高いですし、お客さんと同じ業務ができるか?と聞かれたら難しい。ただ、お客さんの業務の解像度が高ければ高いほど幅広く提案ができるのは間違いありません。

お客さんの業務や業界の解像度を上げていく、理解度を高めていくのは非常に大変です。

3つ目は営業力。

カスタマーサクセスは、どこかのタイミングで提案や利用促進をしなければいけません。ただ、「売る」だけでなく「売れる」状態を作る方がカスタマーサクセスのあるべき姿だと思います。お客さんに使ってもらって、喜んでもらって、結果として利用範囲を広げていただける。他の部署に紹介していただける。という「売れる」を作っていかなければいけない。

「売る」という行為はいきすぎると今までの支援や親身さに利害関係を感じさせてしまうこともあるので、今までの関係を壊さず、お客さんから「買いたい!」「ここに困っている!」をもらって売れるようにするのが難しいポイントです。

4つ目はいかに自走してもらうか。

カスタマーサクセスは「魚を釣ってあげるのではなく、釣り方を教えてあげる」というのがポイントです。できるように導き、自走してもらえるよう、お客さんを育て上げることが、非常に難しく、楽しい部分でもあります。

Q.現在のCS業界の課題はなんでしょうか?

1つ目は業務の型化、効率性の課題があります。

多くの会社が、目の前のお客さんの緊急度・重要度が高い課題やタスクに追われて、「業務の整備」が後回しになってしまい、属人化して担当者によってスキルの差が出たり、業務過多になったりしてしまっています。

会社としての戦略や「業務の型」を作っていきながら、効率化の観点を忘れずにデータを見ていく・ツールを入れる・使いこなす、ということが大切です。業務の型化や効率化が進めば、カスタマーサクセスはより良くなると思っています。

2つ目は人の面の課題があります。

人数が足りないということと、スキルが足りないというところにあります。カスタマーサクセスにおいては職種自体がまだ市場に少ないので採用も難しい状況です。日本の会社は採用にすごく力を入れていますが、育成には力を入れていない印象です。ハイレベルな人だけを採用し続けない限りは、採用した人を育てないと永久にスキルセットの部分で属人化問題が解決されない。育成の部分は非常に課題があると思います。

Q.これからの丸田さんの目標を教えてください

まずはカスタマーサクセスの業界で顕著な成功事例を出していきたいです。

「こういう取り組みをしたから、この事業がものすごく大きく伸びた」とか、「CSのツールを入れたことによってCSの業務が劇的に変わった」とか、いまは代表的な成功事例が少ないので、みんなが真似したくなるような成功事例やロールモデルを増やすことに貢献していきたいです。

あとは、カスタマーサクセスの方のスキルアップであったり、キャリアアップなどの個人の支援にも力を入れていきたいですね。

なので、会社としてのカスタマーサクセスの成功事例を出したり、個人としてのカスタマーサクセスのキャリアアップができたというような成功事例を出すお手伝いをしていきたいと思っています。


ーーー丸田さん、ありがとうございました!

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