「能動的ハイタッチ」で顧客の本質的な課題解決に向き合う。株式会社Sales Marker取締役COOの荻原慎太郎氏インタビュー

#インタビュー記事

2024年5月8日

荻原 慎太郎氏プロフィール

株式会社Sales Marker 取締役COO

キーエンスに入社後、法人営業として輸送や電子部品、食品業界などの企業向けに産業機器の販売に従事した後、Voicyに転職。入社後は、法人営業の立ち上げに事業開発として携わり、在籍中は法人営業を中心に、新規営業、営業企画、アライアンス、カスタマーサクセスなどの事業拡大を図る幅広い業務を担当。 その後、CrossBorder株式会社を共同創業。大企業とスタートアップ2社での経験を活かし、BtoBインテントセールスSaaS『Sales Marker』を立ち上げる。

Q.経歴を教えてください 

新卒で株式会社キーエンスという会社に入りました。キーエンスは、工場と製造現場の自動化を実現する製品を販売してる会社です。そこで営業担当として能動的に提案しながら新規顧客の開拓を行っていました。

3年目になると、学生時代から興味があった起業やスタートアップへの思いが強くなり、株式会社Voicyという音声配信プラットフォームを提供しているスタートアップの会社に転職しました。

株式会社Voicyは、当時20人ぐらいの規模だったので、事業開発をメイン業務としてセールス、アライアンス、カスタマーサクセス、企画営業など、様々な業務を行っていました。

その後、株式会社Sales Marker、(旧CrossBorder株式会社)の創業メンバーと出会い、起業に至るという流れです。今は、取締役COOとしてセールスとインテントセールスコンサルタント(導入後の顧客支援チーム)を主に管掌しています。

Q.Sales Markerはどんな会社ですか? 

Sales Markerは、社名と同じ『Sales Marker』というSaaSを提供しているスタートアップです。『Sales Marker』は主にインテント(企業の検索履歴などのWeb上の行動履歴データ)を可視化・分析することで、「今あなたのサービスが欲しい顧客が見つかる」というサービスです。企業・部署・人事を掛け合わせたデータベース、マルチチャネルアプローチ機能、AIを掛け合わせることによって、最適かつ、効率的なアプローチを実現できることが強みのサービスです。

弊社は、パーパスとして「全ての人と企業が、既存の枠を超えて挑戦できる世界を創る。」を掲げており、パーパスに基づいたバリューも定めています。そのようなパーパスを掲げているので、まずは弊社自身が既存の枠にとらわれずに営業活動のゲームチェンジを起こすためのチャレンジをしています。そして、お客様にも価値提供していき成果を出していただくことで、お客様のさらなる挑戦に繋がる支援をしたいと考えています。

Q.Sales MarkerのCS組織について教えてください!

CS(カスタマーサクセス)組織には、現在、約20名(正社員13名)が在籍しております。業務内容は、『Sales Marker』を使っていただいてる企業の営業やマーケティング組織の方向けに、営業の戦略立案からプロジェクトロードマップの策定、定例を通じた伴走支援によるSales Markerを用いて成果を創出するための支援を行っています。定例MTGは毎週もしくは隔週と頻度も高く、全てのお客様にハイタッチで支援をしています。

弊社の顧客支援組織は、元々、他のSaaS企業と同様にCSという名前にしておりましたが、現在は「ISC(インテントセールスコンサルタント)」と名付けております。

弊社のISCのスタンスは「能動的ハイタッチ」です。営業は変数が多いのでお客様の本質的な課題解決をするために、深く入り込んで支援をしないと、成果が出ないことが多いんです。我々はSales Markerを使って満足してもらうことがゴールではなく、アウトカムとして商談KPIを改善することを実現します。その結果、お客様の売上向上、事業成長に寄与したいと考えています。

アウトカムとして、商談数を増やすための要素を因数分解すると、アプローチの数と質に分かれます。数の部分ではお客様側に行動してもらうことが重要になり、質の部分では、USPの特定および活用や営業一人一人のスキルが大きく成果に影響します。たとえ時間をかけてきれいな営業戦略を描いても、お客様のスキルに応じて商談が取れるか取れないかが変わってくるので、支援する範囲がプロダクトが関わる範囲にとどまらず、お客様の組織にも入り込み支援をしていきます。

我々ISCが目指しているのは、本質的な課題解決を通じたアウトカムの達成です。

そんなISCには必要な要素が3つあると思っています。

1つ目は、CS(カスタマーサクセス)としてアウトカムにフォーカスするスタンスやプロジェクトを推進するスキル。

2つ目は、営業の戦略や戦術、施策を立案するにあたって必要なセールス領域の専門性。

3つ目は、コンサルタントとしての能力。お客様によって業界も、商材も、体制も、競合も違うので、お客様ごとに真の課題は異なります。課題を特定して解決策を提供するコンサルタントとしての能力もISCとして必要な要素です。

この3つが必要だと社内で定義したときに、一般的なCSの枠を越える必要性に気がつき、Sales MarkerのCS組織を再定義しないといけないと考え、ISCという名称に変更しました。

Q.ISCでのKGIやKPIなどの取り組み内容を教えてください!

まずKGIは、NRRとチャーンレートです。KPIはオンボーディングの完了率を設定します。

KPIとしてオンボーディング完了率を追っていくにあたって、オンボーディング完了要件の中身が特に大事だと思ってます。

弊社ではオンボーディングの完了要件において重視すべきことを2つに分けています。

1つ目は、顧客側の状態です。お客様側に適切な目標があるか、その目標に対してSales Markerを適切に使えているか、最後に目標に対する活動をするための体制ができているかを確認します。

2つ目は、コンサルティングとしての要素です。「お客様の業界や知識をお客様以上に理解しているか。」「ロードマップが明らかになっているか。」「能動的に営業戦略を描いているか。」「お客様との関係値を構築できているか」を確認しています。

この2つがアウトカム、つまり商談を作る前段階での必須要件となります。

おそらく、あらゆるツールで「この担当だったら成績が出る、この担当だったら成績が出ない」という属人化の問題は、よく出てくる話だと思います。

弊社では属人化の問題を解消するために、お客様にとっての「サクセス」を定義し、達成するための構成要素と必要なプロセスを洗い出し、適切なオンボーディングのゴールをどこにするのか、アクション、プロセスをどうするのか、というのを、オンボーディング時に明確にするよう取り組んでいます。

Q.Sales MarkerのCS組織で大切にしていることを教えてください! 

大切にしていることは、プレーヤーとしての観点と組織マネジメントとしての観点の2つがあります。

プレーヤーとしては、顧客の成果を出すことに本気になるスタンスです。メンバーには顧客の成果を出すために、プロダクトだけではなく、本質的な課題を大事にしてほしいと思っています。

自社で様々なSaaSを導入し、CSを受けた時に、非常に大事だなと感じたポイントは「お客様の真の課題にフォーカスする」ということです。プロダクトの使い方ではなくて、課題にフォーカスしてほしい。極端な話、Sales Markerの活用は課題解決のための一つのHowでしかないので、Sales Markerを使わなくても課題解決ができればいい!というぐらい、課題にフォーカスするスタンスで臨むのが重要だと考えています。

過去に、アウトバウンド営業に挑戦しはじめたお客様で、なかなか営業メンバーのマインド醸成や有効な活用方法の定着に苦戦している企業がございました。そこで、弊社のISCが、クライアントのオフィスに訪問しテレアポ勉強会を開催することもありました。お客様からは「そこまで中に入り込んでくれるんだ!」と言っていただくこともあります。

次に、組織マネジメントとしては、共通認識を合わせること。また、質を落とさずに、コンサルティング支援をしていくために、「クオリティの平準化」を最近のテーマとして取り組んでいます。

ISCが特にご評価いただくポイントとしては、セールス領域における知見の深さです。コンサルティングのクオリティは非常に評価いただいている部分でもあるので、弊社としても大事にしていきたい。だからこそ、クオリティの平準化に力を入れて取り組んでいます。

Q.逆にSales MarkerのCS組織での課題点、今後強化していきたい点を教えてください!

導入前の時点でのセールスとの連携です。私はSaaSはリレーだと思っているので、カスタマーサクセスは商談段階から始まっていると思っています。

商談段階でお客様と合意すべきことや伝えるべきことが合意されていないと、後で認識のズレを修正しないといけないわけです。後で認識のズレが発生すると、サクセスが難しくなってしまう。なのでお客様の成功のためにうまくいったこと、うまくいかなかったこと、問題になったこと、成果が出たこと、をセールスに常に同期していくことが重要です。セールスもISCもどちらもお客様の解像度が高い状態にしないといけないと感じています。

次に、「インテルトセールス」という今までなかった概念を生み出しているため、お客様はわからないことがわからない状態なんです。なので、お客様側からすると質問が完了したと思って発注してしまいますが、「インテントデータ」がそもそもよくわからないはずなので、「深い質問ができない」「質問のしようがない」という状態に陥ってしまいます。なので、弊社から情報を積極的にお客様に伝えていかなければいけません。

Q.先ほどの課題点、強化したい点について、既に取り組んでいる施策やこれから取り組んでいきたい施策を教えてください!

お客様に”壁”を先に伝えることです。お客様の感情を大切にするために、プリセールスであえてお客様の期待値を落とします。お客様の目から「すぐに成果が出そう!」という感情が滲み出ている場合もあるのですが、プリセールスでは現実的なラインを理解してもらうようにしています。

現実的なラインを理解してもらっていない場合だと、支援が始まってから「体制をしっかり作れていない」という第1の壁でつまづくことが多いです。ここで失敗するとお客様も、とても落ち込んでしまうんですよね。

その後、「よし体制ができた!」となったときに、次は「社内で使いこなせる人がいない」という第2の壁にぶつかります。そして、最後は「使いこなしたけど成果が出ない」という第3の壁にぶつかります。

そのため、セールスの段階で、「3つの壁がきますよ。」ということを示しています。先に示すのと、導入してから「全然うまくいかない!」と思われるのとでは雲泥の差です。この導入時の説明次第で、肌感覚ですが、サクセスの確率は30%ぐらい上がると思っています。

ですので、商談時にお客様側から質問が来なくても、弊社からお客様に壁が来ることを開示していくという動きが必要で、ISCとしては、セールスに3つの壁があることをお客様に開示するようフィードバックするという意識や活動が必要で、いままさに取り組んでいます。

Sales Markerのサクセスジャーニーマップ

Q.CS業務を行ってきた中で(荻原さん個人の)嬉しかったことを教えてください!

もちろんお客様に成果を出していただくことが嬉しいのですが、他にも嬉しかったことが2つあります。

1つ目は、気づいたら担当した企業のチームの方が昇進してること。

2つ目は、実際にSales Markerを利用している方から契約の継続を願っていただけることです。

マネージャーだけではなく、実際に触ってる方が「もっとやりたい」「もっと使いたい」という思いを持って継続していただける事はすごく嬉しいです。営業マインドだと、どうしても「決裁者に満足してもらえればいい」という部分も出てくるのですが、サクセスマインドだと、本当に困ってる現場の方がサクセスして、今後も継続して活用していきたいと思っていただけることが重要だと思います。

現場の方が継続を望んでくれることは、本質的に価値提供できたという証明になると思っています。利用してくれる方が「本当になくては困る」と思ってもらえる状態が一番ですよね。実際に活用している方から継続を希望していただけることは、結局KPIよりも一番のやりがいになりますね。

Q.これからの目標を教えてください。

お客様のサクセスの再現性を高めることです。理想はお客様が成功して、感謝いただき、ISCが満たされる。という良いサイクルを1社でも多く増やして循環させていきたいです。

ーーー荻原さん、ありがとうございました!

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https://sales-marker.jp/case_study