【ヘルススコアの作り方】導入手順からよくある失敗例まで完全解説

#お役立ち記事 : CSのTips

2024年5月2日

カスタマーサクセスに必須なヘルススコアとは?

ヘルススコアとはカスタマーサクセスの世界における顧客の健全性を測るための指標です。このスコアによって、顧客が製品やサービスに対して満足しているか、また継続して利用するつもりがあるかが判断されます。ヘルススコアを用いることにより、顧客のロイヤルティ向上、チャーン率(解約率)の低下、さらにはアップセルやクロスセルのチャンスを増加させることができます。

ヘルススコアの利用は、顧客との関係性を良好なまま維持するための基盤になります。それぞれの顧客の行動パターンを正確に把握し、それに合わせたヘルススコアを適切に設定することでヘルススコアを用いる効果を最大限発揮できるようにしましょう。

ヘルススコアを導入することによるカスタマーサクセスへのメリット3選

ヘルススコアの導入は、カスタマーサクセスチームにとって革命的な変化をもたらします。ヘルススコアを用いることで、顧客の状況を正確に把握し、適切なサポートを提供することが可能になります。具体的には、解約の危険性を早期に察知し、アップセルやクロスセルの機会を見極めることができるだけでなく、顧客ごとに最適なネクストアクションを計画することが可能です。これらのメリットにより、企業は顧客満足度の向上とビジネス成果の最大化を図ることができます。

解約の危険性をいち早く察知できる

ヘルススコアによる最大のメリットの一つは、解約の危険性をいち早く察知できることです。顧客の活動パターンや利用状況から、サービスに対する満足度が低下している兆候を見つけ出すことが可能になります。これにより、問題が深刻化する前に対策を講じ、顧客の離脱を防ぐことができます。

アップセル/クロスセルの可能性を明確化できる

アップセルやクロスセルは、既存の顧客に対して追加の価値を提供し、企業の収益を増やす効果的な手段です。ヘルススコアの分析を通じて、顧客が製品やサービスに対して持つ満足度や関心の度合いを理解することができます。これにより、顧客のニーズに合致した提案を行うタイミングや内容を正確に把握することが可能になります。

顧客ごとのネクストアクションを明確化できる

ヘルススコアを利用することで、顧客ごとにカスタマイズされたアクションプランを作成し、より効果的なカスタマーサクセス活動を展開することが可能になります。

具体的には、ヘルススコアが高い顧客に対しては、新しい機能の紹介や、より高度なサポートプランの提案など、顧客の満足度をさらに高めるためのアクションを策定します。一方で、ヘルススコアが低い顧客に対しては、問題点の特定と解決策の提供、定期的なフォローアップを通じて、満足度の向上を行うことが可能です。

ヘルススコアの作り方

ヘルススコアの導入は、カスタマーサクセス戦略において極めて重要なステップです。このスコアによって、顧客の健全性を定量的に把握し、顧客との関係を強化するための具体的なアクションを導くことが可能になります。ヘルススコアを作る過程は、顧客健康状態の明確な定義付けから始まり、スコア化するための指標の決定、指標を用いた計算式の策定、スコアの閾値とそれに基づくアクションの決定、そしてヘルススコアを元にした運用方法の策定です。各ステップは、顧客との関係を最適化し、長期的な成功を確保するために不可欠です。ここではそれぞれのステップについて詳細に説明していきますので是非ご参考ください。

顧客健康状態の定義付け

顧客の健康状態を定義することは、ヘルススコアを作る上での初歩的なステップです。健康状態とは、顧客が製品やサービスにどれほど満足しており、長期的に継続して利用する可能性が高いかを示す指標です。この段階では、顧客のエンゲージメント、満足度、製品の利用頻度など、健全な顧客関係を構築するために重要な要素を抽出します。

スコア化するための指標の決定

ヘルススコアを構築する上での重要部分は、スコア化するための指標の決定です。これらの指標は、顧客の健康状態を正確に把握し、定量化するために不可欠です。指標を選定する際には、顧客エンゲージメント、製品使用頻度、サポートリクエストの数、フィードバックの質など、顧客の行動や反応を広くカバーするものを選ぶ必要があります。

~ヘルススコアに使われる主な指標~ DEARモデルとは?

ヘルススコアを作成するにあたって使われる主な指標として「DEARモデル」というものがあります。DEARモデルとはカスタマーサクセスツールのベンダーとして有名なGainsight社が提唱している、ヘルススコアを設計するための主な指標モデルです。

D・E・A・Rのそれぞれの頭文字をとったこちらのモデルについて、ここではそれぞれ紹介していきます。

Deployment:Deployment

初期設定やオンボーディングを適切に完了できているかを測るための指標です。導入したプロダクトの使用が開始できる状態かを確認できます。

(例)

  • オンボーディングが完了しているユーザー数

  • ツールのアクティブユーザー数

Engagement:Engagement

ステークホルダーとの関係性を数値化した指標になります。お客様であるユーザーを対象に、メールに対する返信状況や、イベントの参加状況などをもとに、プロダクトに対するエンゲージを定量的に評価することができます。

(例)

  • 決済者がイベントに申し込んでいるか?

  • メールを開封してもらえているか?

Adoption:Adoption

製品の活用状況を確認するための指標です。本モデルを提唱しているGainsight社では、これを「深さ」と「広さ」に分けて検討することを提唱しています。

ここで「深さ」とはライセンスをデプロイしたユーザーのアクティブ率。「広さ」とは製品の多岐にわたる機能を使いこなせているかを指します。

ROI:ROI(Return on Investment)

顧客がプロダクトに対して価値を感じているかどうかを測るための指標です。

多くの場合、定量的に数値を確認することが難しいため、定例時間等を設けて、顧客のゴール設定とそれに対する進捗の確認/フォローアップを行います。それ以外にもアンケート依頼や対面でのヒアリングなどで確認することも可能です。

指標を用いたヘルススコアの計算式の策定

ヘルススコアの計算式を策定する際には、選定した指標を基に、顧客の健全性を適切に反映する式を作成する必要があります。計算式の設計には、各指標の重要性に応じた加重平均を用いることが一般的です。このプロセスでは、顧客の行動や反応がヘルススコアにどのように影響するかを定量的に評価します。

ヘルススコアの閾値とそれに対するアクションの決定

ヘルススコアの閾値を設定することは、カスタマーサクセスの取り組みを効果的に導くために重要です。これにより、顧客の健康状態を「健全」、「要注意」、「危険」といったカテゴリーに分類し、それぞれの状態に適したアクションプランを立てることが可能になります。ここで、閾値の設定は、ビジネスの目標や顧客の成功基準に基づいて行うようにしましょう。

ヘルススコアを元にした運用方法の決定

ヘルススコアを実際の運用に活かす方法を決定することで、カスタマーサクセスの効率と効果を大幅に向上させることができます。この運用方法には、スコアの監視、アクションの実施、結果の分析と改善が含まれます。運用方法を決定する際には、顧客ごとにパーソナライズされた対応が可能になるよう、フレキシブルで反応性の高いシステムを構築することが重要です。

ヘルススコアを用いた失敗例とは?

ヘルススコアは顧客関係管理の強力なツールでありながら、適切な運用がされない場合は期待した成果を得られないことがあります。そのような失敗例を通じて、ヘルススコアの導入と運用における落とし穴を理解し適切な運用ができるようにしましょう。

定性的データを指標に用いることにより担当者の主観が入ってしまう

ヘルススコアを設計する際に、定性的データを重要な指標として採用することは、担当者の主観が結果に影響を与える一因となり得ます。顧客からのフィードバックやコメントなどの定性的データは、その解釈に幅があるため、どのようにスコアに反映させるかが一貫性を欠くことがあります。

解決策としては、定性的データを定量的な指標に変換する明確なガイドラインを設定することが有効です。たとえば、顧客フィードバックを特定のカテゴリーに分類し、それぞれにスコアを割り当てるなど、客観性を確保する手法を取り入れることが重要です。また、複数の担当者が同じデータを評価し、その結果を平均化することも、主観性を軽減する有効な方法です。

ヘルススコアの更新に時間がかかってしまう

ヘルススコアの定期的な更新は、顧客の最新の状態を正確に把握するために不可欠です。しかし、データの収集や分析に時間がかかり過ぎると、スコアが現状を反映していない時期が長くなり、適切なアクションが遅れることがあります。

この問題に対処するためには、自動化ツールの導入が効果的です。顧客データの収集からスコアの計算、さらにはアラートの設定までを自動化することで、リアルタイムに近い形でヘルススコアを更新し、迅速な対応を可能にします。また、定期的なプロセスの見直しを行い、効率化の余地がないかを常に検討することも重要です。

社内定着に時間がかかってしまう

新しいシステムや手法、特にヘルススコアのような顧客関係管理ツールの導入は、単に技術的な実装を超えた課題を含みます。これには、組織文化への組み込み、従業員の理解と受け入れ、そして継続的な利用への動機付けが含まれます。

社内での定着に時間がかかる主な要因は、変化に対する抵抗、不十分なトレーニング、そしてシステムの価値を理解していないことにあります。実際の成功事例を通じて、ヘルススコアが顧客満足度の向上、顧客ロイヤルティの強化、そしてビジネス成果の向上にどのように貢献するかを示すことで、社内での定着を促進するようにしましょう。

カスタマーサクセスツールを用いてヘルススコアを最大限活用しよう!

カスタマーサクセスツールの導入は、顧客の健全性を評価し、長期的な顧客関係を構築する上で欠かせない要素です。ヘルススコアを効率的に活用することで、顧客満足度の向上、ロイヤルティの強化、そしてビジネス成果の最大化に繋げることができます。カスタマーサクセスツールを用いることで、データ駆動型の意思決定を行い、顧客との関係をより深く、より個別化して管理することが可能になります。

まとめ

ヘルススコアの導入と運用は、カスタマーサクセスの取り組みを強化し、顧客関係を深化させるために非常に有効な手段です。この記事では、ヘルススコアの概念からその作り方、活用方法、そしてカスタマーサクセスツールを通じた最大限の利用方法まで、幅広く解説しました。

ヘルススコアを最大限に活用することで、顧客の健全性をリアルタイムで把握し、カスタマイズされた対応を迅速に実施することが可能になります。また、カスタマーサクセスツールの導入は、このプロセスをさらに効率的かつ効果的にします。

組織内でのヘルススコアの定着には時間がかかることがありますが、従業員への十分なトレーニングと、ツールの価値を理解してもらうことが成功の鍵です。最終的に、ヘルススコアとカスタマーサクセスツールを活用することで、顧客中心のビジネス戦略を実現し、長期的なビジネス成果を確保することができます。カスタマーサクセスの道を進むすべての企業にとって、ヘルススコアはその旅の重要なコンパスとなるでしょう。